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二月はとう立ちを夢見る月

二月も半分以上が過ぎました。
端境期の不安がひしひしと押し寄せてきます。

冬は根菜の季節と言いますが、その根菜の殆どが三月になるのを待たずに、殆ど出せなくなります。
冬の間に養分を地下に蓄えて、じっと耐え忍んできた作物は、春になるといっせいに子孫繁殖の活動を始めます。
とう立ちし、花を咲かせ、実をつけ、種を充実させます。
そして、子孫繁栄のために、それまで堅実に蓄えてきた地下の養分を惜しむことなく使うのです。

緻密で、甘くて、旨みがあった根菜たちは、養分がどんどんと地上に吸い取られ、食感も味も変わってきます。
肉質は緻密だったものがすかすかになります。
ジューシーだったものが、乾いたようになってきます。
甘かったものも、甘くなくなります。
旨みも減ってきます。

作物の種類や品種によって、味の変わり方、食感の変わり方、変わる時期はまちまちですが、畑でとう立ちを気にしながら、毎日を過ごしていると、二月というのは、たとえとう立ちが目にはっきりと見えていなくても、植物は体の中で準備を始めている月なんだな・・・ということが否応なく分かります。
とう立ちはしていなくても、葉っぱの雰囲気が変わってきます。
新しい葉っぱが出てきます。
ロゼット状に寝そべっていたものが、垂直になろうとする気配がします。
地上に露出している地下部の肌の輝きが減ってきます。
どれもこれもがとう立ちを夢見て、ひそかにうごめいているんです。

美味しい野菜を作りたい、美味しい野菜を食べてもらいたい、という気持ちがあります。
その気持ちからすると、とう立ちの準備を始めて、味や食感の落ちてきた野菜は消費者に提供するべきじゃないんじゃないか・・・と揺れます。
でも、人間は限りある自然の中から、その時その時食べられるものを都合してきたので、いつでも最高に美味しいものを食べたいがために、ハウスで環境を調整したり、よそから運び込んだりするのは、人間の大きなエゴの一つなんだろうなという気持ちもあります。
その気持ちからすると、自然から食べ物を享受する側としての謙虚さをもうちょっと考えた方がいいんじゃないかな、自然から食べ物をもらうということを、こういう味や食感の変化も含めて、消費者にも知ってもらった方がいいんじゃないかな・・・と揺れます。

この揺れ動きの中で、このニンジンをまだ売ろうか、でも味がかなり落ちてきたからもう売るのをやめようか、すごく悩むんです。

二月は野菜がとう立ちを夢見る月。
二月は農家がジレンマに悩む月。

By | 20. 2月 2011 | | 2 Comments »

2 Comments

  1. ふうごん より:

    こんにちは。

    昨日、買い置きしていたたそりあさんの玄米を搗きました。
    (いただきものの精米済みのお米をようやく食べ終えたので)

    夫は基本、白米が好みなので何とか胚芽を残しての7分くらい。
    消化吸収がまだ未完成な娘には3~5分のミックス(でも玄米大好き)。
    もちろん、玄米のままも残して。

    白濁して当たり前の、白米の研ぎ汁。
    これが家庭排水として水質汚染の原因のひとつと知ってから、なるべく庭に撒いたり鉢植えの草花にやるように。

    3分搗きくらいでもあまり混濁しないし、玄米ではほぼ透明のままの研ぎ汁。
    ・・・玄米を食べるようになって初めて気付いたことです。
    私達は「栄養」を捨てて海を汚してるんだと。

    「米は研げば研ぐほど美味くなるが、栄養はどんどん失われていく」と
    だいぶ昔、有名な和食処の板前さんが言っていたのが印象的だったっけ。

    好みはあるものの、ビタミンとミネラル豊富な玄米の美味しさの方が私には上だな~ってしみじみ感じています。

    玄米のまま安心して食べられるお米が手に入る幸せ、感謝です。

    • M.T. より:

      ふうごんさま、

      こんにちは。

      玄米と白米、好みがいろいろと分かれますよね。
      私はどちらも好きですが(というか玄米の美味しさと白米の美味しさは別物かなあという気がします)、どちらかというと玄米を食べたいなあと思うことの方が多いです。

      うちも米の研ぎ汁を鉢植えにやっていたことがありますが、研ぎ汁の含まれている油成分が狭い鉢の土の上に膜をはってしまうようでよくないとたそりあ夫に指摘を受けてから、やめています(庭だと広さが違うので大丈夫なんでしょうが)。代わりにコンポストの水分補給に米の研ぎ汁を使っています。研ぎ汁だとか糠だとか、庭やコンポストのように、自然にうまく還す仕組みが大切なんでしょうね。

      ちなみに糠は、有機農家にとっては大切な資材なんです。夏野菜を育てる温床も、堆肥づくりにも、ボカシと呼ばれる肥料づくりにも、糠は欠かせません。もしも日本中の人が玄米大好きになってしまったら、有機農家はかなり困っちゃうかも・・・^.^;;。

      それから、残念なお知らせなんですが、たそりあの玄米、もう残りが僅かになってきました。
      ちびちびと直売などに出していますが、3月のうちに販売終了になると思います(我が家も4月からはよそのお米を買う生活です)。
      5畝にも満たないくらいの小さな田んぼで初めて作ったお米が、こんなに皆様に気に入っていただけるとは思いませんでした。すごく嬉しかったです。ありがとうございました。