ちょっと前のブログ記事 土壌分析 で、
作物の育ちが悪い畑がある
土壌分析してもらったら、リン酸、カルシウム、マグネシウムの含有量が極度に低いということが分かった
という話を書きました。
この結果を見て、さあ、大変、リン酸、カルシウム、マグネシウムをなんらかの形で畑に投与しなければ・・・と思ったのですが、その後いろいろ調べていくうちに、そういう単純なことでいいんだろうか?と思い始めました。
最初のきっかけはリン酸の値です。
私は土壌分析のリン酸の値は、土壌に含まれる全てのリン酸の値だと思っていたのですが、そうじゃないかも・・・。
いろいろ調べてみると、土壌分析のリン酸の値は、可吸態リン酸と呼ばれるものの含有率であることが多いようです。
リン酸は土壌の中でいろんな形態をとっています。
1.カルシウムとくっついたリン酸
カルシウム型リン酸と呼ばれています。植物の根っこから吸収されやすい形のリン酸です。
2.水に溶けやすい水溶性のリン酸
土壌溶液リン酸、水溶性リン酸と呼ばれています。水に溶けて植物に吸収されやすい一方、水とともにどこかへ流れて失われやすい形のリン酸です。
3.アルミニウムや鉄とくっついたリン酸
アルミニウム・鉄型リン酸と呼ばれています。この形のリン酸は植物に吸収されにくく、酸性土壌では特にこういうタイプのリン酸が増えやすいとのこと。
4.微生物にとりこまれたリン酸
有機態リン酸と呼ばれています。植物の根っこにくるまれた状態のリン酸も同じように扱われています。こういう形のリン酸は、アルミニウムや鉄とくっつくこともなく、微生物が死んで分解されると徐々に土壌に放出されてゆきます。堆肥をたくさん使った畑(微生物の多い土壌)に多いタイプのリン酸です。
上の四つのうち、1と2がすぐに植物が吸収可能なリン酸ということで、可吸態リン酸と呼ばれています。
土壌診断で計測されるのはだから、1と2のリン酸値の合計(おそらく)。
うちの畑で値が低いのも、1と2の合計。
逆に言うと、3と4はひょっとしたらあるかもしれない。
正直、4はそんなに多くないかもしれません。何年も何もしていなかった、堆肥とかも投入していない畑なので、自然に草を分解する微生物はそれなりにいるのかもしれませんが、とりたてて多いわけじゃないのかもと思っています。
でも、3はけっこうあるかもしれません。
植物がすぐに利用できる形のリン酸は少ないのかもしれないけれど、隠れリン酸はひょっとしたらあるのかも?
というのが、いろいろ調べて到達した結論です。
そして、土壌分析の結果「カルシウムが少ない」というのが、さらにこの結論と結びつきます。
カルシウムが増えれば、隠れリン酸が1.のカルシウム型リン酸に転じるのでは?
単にリン酸を投与するというのではなく、土壌の隠れリン酸をなんとか生きたリン酸の形にしてやる方が自然なのでは?
そういう考え方にどんどんと傾いていったわけなんです。
さらに、さらに、堆肥や未分解の有機物をうまく使ってやれば、土壌に微生物が増えていって、4.の有機態リン酸が増えるのでは?
これは、土壌診断のリン酸値にはなんら貢献しませんが、大事なのは値ではなく、植物が適度なリン酸を利用できるかどうかということです。そういう意味で、少しずつリン酸を放出してゆく有機態リン酸というのは、一番理想の形なのかもしれません。
そう考えてくると、土壌診断の結果を見て、慌ててリン酸をがんがん畑に投与するのは、ちょっと見送ろうという気持ちになってきました。
まず、カルシウムを増やすことを考える。
それから、これは今でも恒常的に努力していることなんですが、土壌の微生物を増やすことを考える。
この二つをやっても、改善されなかったら、その時に始めてリン酸投与を考えてみる。
というのでもいいんじゃないかなあ。